腎臓内科について
腎臓はいわば「全身を巡る血液の浄化フィルター」のようなもので、血液中の毒素を尿に濾し出す働きをしています。
ですから「血液の状態を鋭敏に映し出す鏡」のような臓器です。
血液の状態が悪かったり、血圧が高かったりすると徐々にダメージが蓄積し、やがては腎不全に陥り透析が必要となってしまいます。
汚い水の浄水フィルターが傷みやすいのに似ています。
「血液の状態が悪い」とは「血糖値が高い」「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」「尿酸が高い」「その他の測定できない毒素の血中濃度が高い」などの状態を指します。
お腹がポッコリ突き出している方のCT撮影をしますと、たいてい腎臓は表面が凹凸になり萎縮し傷んでいます。
これは「内臓脂肪過多・異所性脂肪過多」が血糖を上げ、コレステロールを上げ、中性脂肪を上げ、尿酸を上げ、測定できない毒素の血中濃度を上げ、血圧を上げ、腎臓に著しいダメージを加えるからです。
つまり「腎臓はメタボリックシンドロームを映し出す鏡」であるとも言えるのです。 腎臓は「一度傷んだら元には戻らない臓器」です。
大切にしないと「一生もたない臓器」であることを認識しましょう。
「人生100年時代」となった今はなおさらです。
現在「70歳以上の透析患者さんが激増」していることがそのことを物語っていると思います。
その他に「糸球体腎炎」「腎盂腎炎」「腎臓結石」「多発性のう胞腎」などの病気によって腎不全になられる方がおられます。
「尿検査」「血液検査」「CT検査」などで現在の腎臓の状態を把握することが大切です。
大切な腎臓を一生守るために。
このような症状の方は受診を
- 健診で検尿に異常が認められた
- 健診で血液検査に異常が認められた
- 健診で超音波検査に異常が認められた
- 尿が泡立つ
- 尿の色がおかしい
- 糖尿病がある
- 高血圧症がある
- 高コレステロール血症がある
- 高中性脂肪血症がある
- 高尿酸血症がある
- 太ってきている
- お腹が出てきている
- 尿管結石になったことがある
- 腎盂腎炎を繰り返している
- むくみがある
- 近縁者に腎臓病の方が多い
主な疾患名
慢性腎臓病(CKD)
慢性に経過するすべての腎臓病の総称です。
糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、高尿酸血症、内臓脂肪・異所性脂肪過多、慢性腎盂腎炎、腎臓結石、多発性のう胞腎、慢性糸球体腎炎など腎臓にダメージを及ぼす様々な疾患が原因となっています。
「成人の8人に1人は慢性腎臓病(CKD)」を有していると推定されています。
周知のとおり、腎不全になると透析治療が必要となります。
また「腎臓の長寿遺伝子との関連性」が明らかになってきており、腎臓を保護することは健康寿命を延ばす上でとても大切です。
そして、腎臓を保護する上においても「内臓脂肪・異所性脂肪を減じること」は最重要と考えます。
内臓脂肪・異所性脂肪を減じた結果として血糖値、コレステロール値、中性脂肪値、尿酸値、測定できない毒素の血中濃度が低下し、腎臓のみならず心臓、血管、脳、皮膚などに優しい体内環境となるのです。
糸球体腎炎
糸球体とは毛細血管がまるで糸の球になったような血液のろ過装置で、腎臓の主要な微細構造です。
この部分に炎症を生じる病態を指します。
多くのタイプが存在し「急性に激しく進行し時間を争う集中治療を要する糸球体腎炎」から「慢性に非常にゆっくり進行し経過観察していく糸球体腎炎」まで様々です。
多くの場合、免疫システムの異常が関係しています。
「劇症タイプ」 では肉眼的血尿、高度蛋白尿、むくみ、息切れ、尿量減少、高血圧、発熱、疲労感、関節痛、紫斑、腹痛、嘔吐、など多彩で激しい症状がみられますので、こうした症状がみられる場合には「すぐに受診」をしてください。
特に激しい症状の場合には速やかに「基幹病院の救急外来を受診」されてください。
糸球体腎炎の精査には入院しての「腎生検(腎臓の組織を体表面から細い針を刺して採取)」が必要です。
糸球体腎炎の半数近くを占める「IgA腎炎(腎症)」は「扁桃肥大」と密接な関連性があります。
「扁桃肥大のある方は特に検尿に注意」を払うようにしてください。
また「感冒症状後」に蛋白尿、血尿がみられる場合も糸球体腎炎が疑われるため放置しないようにしてください。
ネフローゼ症候群
「腎臓から大量の蛋白が漏れ出す病態」の総称です。
上記の「糸球体腎炎」や「微小変化型ネフローゼ」という腎臓の組織変化は微小であるのに多量の蛋白尿が生じる病態(小児のネフローゼの80%)など腎臓疾患が原因となる1次性ネフローゼ症候群と腎臓疾患以外が根本原因である2次性ネフローゼ症候群があります。
2次性ネフローゼ症候群は「糖尿病」「内臓脂肪過多・異所性脂肪過多」「自己免疫疾患」「癌」「ウイルス感染症」「原虫感染症」「アレルギー」「ある種の薬剤」など多彩な原因により生じ得ます。
症状としてむくみ、体重増加、尿の泡立ち、倦怠感、食思不振、腹痛、などが認められます。
病態に応じた薬剤投与、原因の治療、合併症の治療で対処します。
多くの場合入院治療が必要となります。
多発性のう胞腎
遺伝性疾患で常染色体優勢多発性のう胞腎(ADPKD)と常染色体劣勢多発性のう胞腎(ARPKD)に分けられます。
根本的な治療法は存在しません。
トルバプタンという利尿剤の一種を大量服用する治療により多少進行を遅らせることができるものの、頻尿となり多量の飲水が必要となる治療でありQOLの低下は避けられないという問題があります。
「動脈瘤」を合併していることがあるため、その精査が重要です。
腎性尿崩症
先天的原因、後天的原因(悪性腫瘍、感染症、特定の薬剤など)によって、腎臓尿細管という水分の再吸収を担う腎臓の微細構造での抗利尿ホルモンへの感受性が低下しまい「多量の尿による脱水症状」を呈する疾患です。
十分な水分摂取、塩分制限、薬物治療を行います。
重篤な場合は入院治療が必要になります。
腎臓内科疾患、泌尿器科疾患をトータルで診断し、洩れのない診療を提供していきます。